音のない家

ひろこさんが出ていった。

相変わらずラインもするし、出ていったというより
『方位とりに行ってる』
という気持ちでいたんだけど…

玄関扉を開けるとガランとした台所、そして何もない部屋。
何より音が何もない。

生活音はもちろんだけど、冷蔵庫の音もないから本当に無音。

離婚を切り出したのは自分のくせに
"夜逃げをされた、出ていかれた"
そんな気持ちになってくる。

残念ながらこの部屋に自分以外の生活音が流れることはないし、ガランとした部屋が埋まる事もない。

久しぶりに経験する"独り"
今までは彼女がいたから"顔会わせたくないな"とか"面倒くさいは"ってのはあったけど

この4~5年、少なくとも"寂しい"はなかったことに気付いた。 
けっこう胸にくる、久々のこの感情。
思わず笑っちゃうくらい…"寂しい"

それにしても彼女のモノと二人のモノ。
それを省くとこんなにモノは少なくなるのか。

広くなった我が家を見て、ちょっとだけ感動した。